2016年5月27日金曜日

もう通れない道

昨日、バナナが原因で同居人とケンカとなって家を出た友人、私の部屋で2泊目の夜を迎えることとなった、早く仲直りすべし。

そんな友人から今日の晩メシの後で聞いた話である。

紅葉も目的のうちだった昨年の晩秋に車で2人で太宰府まで行ったある日のこと、昼間は太宰府天満宮と周辺の寺を訪れて食事もその近くで楽しんだという、帰路は夕方の6時頃で既に暗かったが連休初日ということもあって帰りを急ぐわけでもなく、ドライブが楽しかったので一般道を選んで福岡市へと戻ったそうだ。

福岡市と太宰府天満宮を行き来する一般道と言えば、私なら国道3号線や県道35号線を通る経路を思い浮かべる、だが、この友人らが帰路に選んだのはそういった広くて明るい道ではなく山越えの道だった。

それとて確か複数のルートがあったような気がする、友人らが通った詳しい道がどこなのかは伏せるが、私の記憶では過去に1度通ったことがある程度で随分と寂しい道だったのを記憶している。

さて、友人らは暗い山道を遅めの速度で何度も右へ左へとカーブしながらピークを越え、更に何度もカーブしながら下って行ったのだが、その下り道で2人同時にヘッドライトに照らされてパッと誰かがこちらに手を振ったのに気付いたそうである。

「あ、今、誰かいたよね?」→「うん、手を振った?」。

ヘッドライトに照らされて誰かがいた場所は左へカーブする位置で右側には車が10台くらいなら停められそうな空き地が広がっていたという、ただし、車が入れぬように対策されていて空き地となっている場所。

エンジンをかけたまま車をその近くに停めて窓から周囲を見回してみるが誰もいない、街灯も無いので真っ暗な中を自分の車のヘッドライトから漏れるように届く範囲で探してみるがやはり人の姿は確認できなかったらしい。

窓から暗い向こう側を見ているのは運転席側、ふいに風に乗って異様な臭気を一瞬感じたところで腕を這うようなに鳥肌が立ち、不快さと気味の悪さから慌てて窓を閉めて車を出したという。

「なんか凄い臭いがした」と言うと、助手席の人も「うん」と言った、臭気を感じたのは運転席の友人だけではなかったのである、安全運転には努めるものの、なんとしても早く帰りたくて仕方がなく、山道から片側1車線の灯りのある車道に合流した時の安堵感はとても大きかったそうである。

結局のところ、2人して確認した「手を振った誰か」は分からぬままで、でも、それが誰なのかなど追求したくはなく、しばらくは何れの話にも登場させたくもない経験だったという。

先にも書いたが私も確か過去に1度だけ通ったことがある道である、それは昼間だった、日が暮れてなどとてもではないが通りたくない道であった、仮に誰か他の人と一緒だとしても昼間でなければ選ばない道である。

だが、友人のその話を聞いてしまったので、私はもう昼間であろうとも通れぬ道になってしまった。

もう、通れない・・・いや、通りたくないのである。