2018年3月16日金曜日

送別会での本音

来週半ばに遠い地へ引っ越してしまう友人がいる、転勤で新年度からはもっと大きな街で暮らすことになる、直に会う機会はあまりなかったが、メールやメッセージをやりとりした数はかなりのものである。

今夜は送別会だった。

その友人と親しい人ばかりが集まっての飲み会だ、人数が多くなるのが分かっていたので某居酒屋の小上がりを予約していて、そこで私たちは午後6時からのひとときを過ごした。

だが、その友人はあまり酒が強くない、せいぜい日本酒3合までか、そのあたりから呂律が回らなくなってくる。

だいぶ顔が赤くなった頃に送別会のメンバーの1人が「いつまでも若々しくて羨ましかったよ」と言うと、「適当なこと言うんじゃない」と薄ら笑いで言ったので驚いた、だいぶ酔っている。

「お前、俺が○○さんと付き合ってるの知っててモーションかけて寝取っただろう」といつの話なのかさっぱりわからぬ事を言い出した、続けて「俺お前のことずっと嫌いだった、どこかに行ってしまえばいいのにと思ってた」と真顔で言った。

傍で聞いていた私は苦笑するしかなく、送別会は冷水を打ったように醒めてシラケてしまった、皆の前で古い話を暴露されてなじられた人もさぞ驚いただろう、その人は頃合いを見計らって帰ってしまった。

下戸に飲ませすぎてはいけない、大人しい紳士の仮面がぽろりとはげてしまうからだ、いつもにこやかだったけれど胸の奥には他の人並みにドロドロとしたものが隅っこに隠れているのだろう、まあ、誰しも同じではあるが。

友人はたぶん酔から覚めても今夜のことは覚えているだろうが、きっと何も覚えていないフリはすると思う、それにしても一体どんな寝取られ方をしたのだろう、怨念に近いものを抱いているとして、まるで引きちぎるような奪い方をしないとああはならないだろう。

20年近く経っても責められぬよう他人の恋人は奪ったりしないほうがよい、怨念は染み付くぞ、怖い怖い。